茨城民俗学会は昭和38年7月14日に結成された。創立当時の会員は38名で、その後、多い時で300名、現在は200名程度を維持している。初代代表理事が外山善八、二代が藤田稔、その間、文化庁の民俗資料緊急調査を毎回行い、報告書として、「鹿島臨海工業地帯緊急報告書」「諸職関係調査報告書」などを発刊してきた。

 機関誌としては「茨城の民俗」を発刊、今年度55号を迎える。
春の総会には毎年、記念講演や、芸能の演奏を行っている。会誌は毎号、特集を組み、調査事項を示し会員の投稿によりまとめている。葬祭、正月習俗、盆習俗、口承文芸、伝説、民間医療、石仏・石塔、長者伝説、講、婚姻、屋敷神、当屋制、禁忌、地名、観音巡拝など。

 講演会は、今までに井之口章二氏を最初に岩本通弥氏まで40回以上開催、その間、肥後和男、竹田旦、宮田登、大島建彦、桜井徳太郎、吉野裕子、牧田茂、宮本袈裟雄、野村純一、天野武、北見俊夫、大林太良、福田アジオ、山折哲雄、松崎憲三の各氏をはじめ多くの方から貴重な講演をいただいた。演題は、柳田国男、民間信仰、陰陽五行、修験道、比較民俗学、東アジアの成年式、文字資料など各分野にわたっている。

 芸能は平成10年に三代目若松若太夫氏を迎え、説経節「小栗判官・矢取りの場」を演じてもらった。平成11年には古谷和子氏の琵琶弾き語り「小栗判官より」をお願いして好評であった。
 8月、11月、2月に談話会、そのほか臨地研修や勉強会がある。談話会は現在148回を数えている。8月には、134回を予定している。会員の研究発表の場として、多くの人たちが参加している。「常陸の青屋祭」「稲田のみかげ石」「地蔵信仰」「茅の民俗」「茨城の石仏石塔」「両墓制」「茨城の鍬」「オビシャ」「鹿島信仰」「大日信仰」「虚空蔵信仰」「あんば信仰」「三匹獅子舞の源流」など。
 この中で大日信仰については、シンポジウムを開いたり、勉強会を開催したりして、研究が進められている、昭和58年に「常南の大日信仰」の発表があってから、話題になり現在もその研究が続けれている。とくに、鼻の大きな大日様、鼻の高い大日様など寛永年創建のものに注目している。

 三匹獅子舞の起源については、大宮町甲神社の獅子頭に永正14年(1517)の銘があることから、この時代に三匹獅子舞があったと思われるが、山路興造氏などは否定的である。この件については佐竹時代に存在したものとして、シンポジウムを開いたり資料を集めたりしている。

 なお本県には棒で獅子頭や弥勒人形をあやつる芸能がある。獅子のほうは「棒ささら」と呼んでいるが、現在、存在しているのは、本県だけらしい。福島県の磐城地方にも、棒ささらの名称はあるが、獅子舞と棒杖を一緒に行うもので、この形式は栃木県にもみられる。なお、このさらと同じ地域にあるのが弥勒人形で、やはり棒であやつる。この棒ささらについても研究中である。三匹獅子舞のサミットの開催も計画しているが、まだ具体的には決まっていない。単行本として、『茨城の民俗』『子どもの歳時と遊び』『茨城のむかし話』『茨城の伝説』『真壁町の民俗』『鹿島線沿線の民俗』などを出版している。

 映像については、ビデオの制作を考え、少しずつ撮影している。県立歴史館でも毎年、1本ずつビデオを制作しているのでので、それに協力しながら、資料の収集にあたっている。

 73年目に行う浜降り神事、金砂神社大祭礼が行われ、民俗学会でも調査委員会を作り、それに協力してきた。7年に1度は小祭礼を行っているが、これは途中までしか神輿がおりない。大祭礼は日立市の海岸までおりる。前回は昭和6年だったので、あやふやになっている道順の調査から手掛けてきた。この祭りは大田楽祭ともいわれ、田楽の演奏が見物である。なお神社は東金砂神社、西金砂神社があり、それぞれ、日をずらして浜降りをする。小祭のビデオを見て平成15年の開催では勉強会を開いてきた。

 本会では1数年前から出前の民俗講座を12年間実施した。毎年10人に講師を委嘱、得意な面で活躍してもらったり,『常陸国風土記』を読む,歩くとして実施した。

 これからの課題として、各郷土資料館との連携を深めることと大学との連携が考えられる。
 郷土歴史民俗資料館は多いが、器だけがあって人を配置しないので、収蔵展示で終わっている所が多い。その中で真壁、常陸大宮、神栖、土浦、日立など毎年新しいテーマで民俗展示をしている所もある。県立歴史館の展示は、企画会社がすべてを行う展覧会に移行しているのは残念である。

 茨城大学、筑波大学、家政学院筑波女子大学、茨城キリスト大学には関連科目があるので、学生などが、本会の会員になることを願っている。私は流通経済大学の共通科目で民俗学を講義したが、意外と興味をもって接してくれている。はじめて聞く民俗学だが、研究したいというものも出てきている。

 これからは近県の民俗学会とも連絡をとりあって、共同研究をしたりしていきたいと思っている。かつて、三匹獅子舞をテーマに談話会を開いた時には、多くの人が集まってきたが、そのような機会を多くしたいと思っている。(今瀬 文也)
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